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M2M講座 第4回 – 日本のM2M業界の歴史を考察する(2)

みなさん、こんにちは。M2M Masterです。
今回は前回から引き続き、M2M業界の発展の歴史について解説します。

前回の講座はこちらになります。
また、M2M講座の目次はこちらになります。

3. メーカブランドで販売される通信モジュールの登場
2007年10月1日、世界でトップシェアの通信モジュールメーカであるシーメンスが帝国ホテルでプレスイベントを行ない、日本に支社を設立して日本の機器メーカに通信モジュールの販売を開始することをリリースしました。また、その際には日本で発売される通信モジュールはソフトバンクのネットワークに接続する許可を得ていることが説明され、ソフトバンクの副社長も会見に同席して両者のアライアンスをアピールしていました。そこで発表されたビジネスモデルは、通信キャリアであるソフトバンクが通信モジュールを販売するのではなく、シーメンスが直接販売するという、日本にはこれまでなかったモデルでの供給形態であることが説明されました。(シーメンスの通信モジュール部門はその後シンテリオンという社名で独立し、さらにその後はSIMカードのトップメーカであるジェムアルトという企業に買収され、現行ではジェムアルト社の一部門としてシンテリオンというブランドで通信モジュールを提供するという状況になっています。本稿ではこの状況も踏まえたうえでシンテリオンと呼ぶことにします。)

このプレスイベントの様子は、こちらこちらのニュースサイトの記事で見ることができます。
また、この直後の時期に、PCに携帯通信に対応した通信モジュールを搭載して、モバイル環境でPCからの携帯網経由のデータ通信を実行できるようにするというビジネスが現れました。NTTドコモはシエラワイヤレスやオプションワイヤレスという海外メーカの通信モジュールがNTTドコモを経由せずにPCメーカに販売されて、そのような形で通信モジュールが搭載されたPCに対して通信サービスを提供するというモデルを新たに創出されました。
そして当初はPC向けモジュールのみに適用されていたこのモデルが、M2M用の通信モジュールにも適用されるようになって来ました。
このような通信キャリアの動きにより、国内には通信キャリアが販売する通信キャリアブランドの国内製モジュールと、海外の通信モジュールメーカが発売するメーカ独自ブランドのモジュールが混在するという状況になりました。当然ながら、登場した直後は通信キャリアのインセンティブによって支えられる安価な国内製モジュールの前に海外勢は苦戦をしていましたが、開発サポートや品質保証に関するノウハウで完全に優位に立つ海外モジュールメーカは、国内の通信キャリアに縛られずに海外でも利用可能なマルチキャリア対応の機器を作りたいという機器メーカの需要にこたえる形で徐々にシェアを獲得していき、2010~2011年ごろに国内製モジュールとの逆転を達成しました。
そのころには、ソフトバンクはシンテリオンだけではなくシエラワイヤレスや華為技術(ファーウェイ)などの通信モジュールメーカとも協業するようになり、またシンテリオンもNTTドコモのネットワークで動作するモジュールの提供を開始し、通信キャリアと通信モジュールメーカは多対多のアライアンス関係の中で案件ごとの協調を図るというモデルに推移していました。

第2回の講座で掲載したサプライチェーン図をみていただくと、「通信サービス」と「通信モジュール」は売る相手が違う、ということに気が付くと思います。通信キャリアが通信モジュールを販売するという形態が発生した時期は、まだM2M業界の黎明期で、事業主体が専用の通信端末を自社が中心となる体制で作っていた時代でした。

しかし、業界の発展にともなって分業化が進み、通信機器メーカが自発的に通信端末を製造・販売することが主流になってくると、「通信サービス」と「通信モジュール」の売る相手が違うという矛盾点がビジネスの阻害要因となってきます。通信機器メーカは、端末を作る時点では、どのような事業主体に販売できるかが確定しておらず、事業主体が最終的にどの通信キャリアを選択するかが不明なため、開発する時点で通信キャリアが決まってしまうことはむしろビジネス的なリスクとなります。また、海外に同じ端末を売ろうと思っても、通信モジュールは海外では使用できないため海外向けには別製品を作るしかありません。
一方、通信キャリアの側としても、通信モジュールにインセンティブを付けて、逆ザヤの価格で売ったとしても、この端末が実際には売れ残ってしまう可能性があり、その場合はインセンティブを回収することができません。したがって、通信キャリアもこのモデルにおいてインセンティブを出す続けることは困難な状況となります。

このような状況の中で、通信機器メーカは、通信キャリアのインセンティブによって安くなったキャリアブランドの通信モジュールよりも、多少高くても自由度の高い3rdParty製モジュールを選択する例が多くなっていき、結果としてモデル間の逆転が発生しました。
この動きを加速するもうひとつの原動力がありました。これを次章に記載したいと思います。

4.通信モジュールの代理店としての電子部品商社の参入
上記で述べましたように海外通信モジュールメーカは、徐々に国内でのシェアを伸ばしていったのですが、その躍進の際には海外通信モジュールメーカの代理店として電子部品商社の活躍があったことも見逃せない事実です。一般的に、日本の電子機器を製造するメーカは、海外製の部品を購入する場合、供給もとの海外企業との直接取引を行なうのではなく、電子部品商社を介した取引を行なうことが一般的になっています。したがって、海外の通信機器メーカが日本に進出する際には、電子部品商社を販売代理店としてのパートナーとして持つことは必須となっています。(電子部品商社がどのような役割を果たしているかは、コラムにおいて記載します。)
通信モジュールの販売代理店となった部品商社は、数百人~1000人以上の営業社員が持つ「営業力=(セールスフォース)」を駆使して機器メーカの需要の発掘に挑むとともに、アンテナやコネクタ、電源回路といった通信モジュールメーカからは供給できない周辺機器を併売したり、機器の開発サポートもモジュールメーカに代わって実施することなどにより、機器メーカに負担なくモジュールの組み込みを推進できるような体制を構築しています。また、自社で機器を開発・販売したり、通信キャリアとの協業体制の構築も積極的に行なうなど、商社ならではの柔軟な発想での事業機会の創造により、M2M用の通信機器の普及を牽引し、海外製通信モジュールが国内製モジュールを逆転するに至った原動力となりました。

後述する(海外製の場合の)通信機器の販売代理店の存在もあわせ、M2Mのサプライチェーンは下図のように書き直すことができます。サプライチェーンを考察する際には、どの会社がどのような単純にプロダクトの開発や製造という視点のみでなく、「営業力」をどの会社が発揮しているかということを理解することも重要で。海外の通信モジュールメーカは国内には数人の人数しか常駐していないのですが、電子部品商社の営業力に牽引されて普及を広げていったと言えるでしょう。

SupplyChain02

次回は、電子部品商社に関するコラムをこちらに掲載しました。

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One Response to M2M講座 第4回 – 日本のM2M業界の歴史を考察する(2)

  1. M2M Master says:

    M2M Masterより、自己レスです。
    昨今、Chip SIMを使用するケースにおいて、通信キャリアが提供するChip SIMを使用するのではなく、通信キャリアの色がついていないChipSIMを機器に実装してその後OTA(Over the Air)の手順にてキャリアのIDを書き込むというeSIMのコンセプトに沿った実装が好まれるケースが多いという実態があるのですが、それって、この歴史的経緯から見ると自明のことだと思いました。
    通信機器メーカは機器を製造する時点では通信キャリアを特定したくないものなのです。
    通信キャリアのChip SIMに対する戦略も、この事実を理解した上で考えていかなきゃならないなぁ、と思った今日この頃です。
    詳細な考察は、将来、M2M講座で取り上げたいと思います。

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