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M2M講座 第5回 – [コラム]電子部品商社と日本の製造業を語る

今回は、講座の流れからは外れまして、「コラム」としてM2M業界の発展において大きな役割を果たした電子部品商社についての解説を記載いたします。
M2M講座の目次はこちら、前回の講座はこちらに掲載されています。

[コラム1] 電子部品商社と日本の製造業

私は、現在は海外企業の一員として外国人に囲まれて日々の業務を行なう身であるが、日本の電子機器メーカが海外製の部品を調達する際に、電子部品商社を介在させることについて、そもそもなぜそのようなことをするのかが外国人にはまったく理解されなかったという経験がある。すなわち、この風習は日本企業特有のものなのだ。このコラムでは、日本の電子部品商社の役割を確認するとともに、このモデルが日本の製造業にどのような影響を与えているかを考察することとしたい。

まず国内の電子機器メーカが海外製の電子部品を購入する際に果たす電子部品商社の役割についてまとめたい。
・物流に関する商習慣の違いの吸収
・契約上のリスクの回避
・通貨の為替レートに関するリスクの回避
・輸出入手続きの実施
・品質保証や有害物質含有に関する国内企業特有要件への対応
・部品を組み込む際の開発サポートや周辺機器の提供
・取引口座の新設の回避

部品を購入する側の電子機器メーカは、上記のような行為を電子部品商社に代行してもらえるためその分だけ負担が少なくなる。その代わり、電子部品商社は部品の仕入れ値に対して15~20%の代金を上乗せして、それにて上記の行為を行なうための原資を確保しつつ利益も上げているというビジネスモデルである。

これはこれでよくできたビジネスモデルであるのだが、日本の電子機器製造業が置かれた現在の競争状況においては、このモデルはむしろ弊害のほうが目立ってきているのではないかと思われる。
日本の電子機器メーカは、電子機器の企画、開発、製造、販売を一貫して行なう垂直統合モデルで発展してきた。しかし、「製造」という部分だけに関していうと、海外の製造請負専門企業(EMS)にコスト面で対抗できなくなっているのである。海外EMSは、台湾などの高度な知識を持つ人材を確保しやすい場所に本拠地を持ち、中国など人件費が安い国に製造工場を持って、他社が企画・開発した製品の製造を請け負うという事業を行なっており、いまや世界のほとんどの電子機器はこの形態の製造企業によって作られているのが実状である。(これらの企業は、開発も含めて請け負う場合もあり、その場合はODMとよぶのが一般的である。EMSとODMの形態を併せると世界中の電子機器の大部分はこの形態で製造されているといってよい。)
海外EMSのコスト低減の要因は、以下の3つがあげられる。
・人件費が安い国・地域に最新鋭の製造装置とスキルの高い作業員を確保することによって実現する生産性の高い工場
・世界中に工場を持ち、部品の生産地と最終消費地を考慮してもっとも適した場所で製造することによって実現する物流コスト最適化
・部品を大量に購入することによって納入価格を低減する部品調達力
この3つを戦略的に最大化することによって、EMSは競争力を高めているのである。

これに対して、日本の製造業は、部品調達の部分と部品の物流に関する部分の大多数は電子部品商社に丸投げしており、この点での戦略構築能力を持っていない。むろんこれだけが原因ではないとは思うが、この部分の戦略構築能力の欠如が日本の電子機器製造業の低迷の一因となっているということは言えるだろう。

この状況を打破し、日本の電子機器製造業がふたたび世界マーケットでの高い競争力を獲得する日は来るのであろうか。私は、それを打開するための方向性のひとつとして、電子部品商社がEMSの機能を持つというモデルに可能性を感じている。電子部品商社の最大手企業である加賀電子は、すでにEMSの業態にも参入しているのである。電子部品商社は、部品の調達と物流の最適化はプロ中のプロと言ってよい。そこがもし質の高い生産設備(=工場)を持つことができれば、海外のEMSにも対抗できる存在となりうると見ている。電子部品商社には、商社として培ってきた「ビジネスモデル創造能力」もあり、これは海外EMSにはない優位点となるはずだ。
現状の日本の電子部品商社のマーケットは、ちょっと企業数が多すぎる(=1社当たりの規模が小さすぎる)状態であり、このままでは超大企業である海外EMSに対抗することは難しいとは思うが、業界再編などで企業規模を大型化すればポテンシャルとしては高いものを持っていると思う。日本の電子部品商社がEMSのビジネスを広げていき、日本の製造業の復活の原動力となる日を私は夢見ている。

次回は、M2M業界のサプライチェーンの変遷の歴史に戻りまして、講座を進めていきます。

次回の講座はこちらに掲載されました。

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