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新世代M2Mコンソーシアムの森川氏の話(2/2)

昨日の続きです。

前回のエントリーはこちらからご参照下さい。

さて「事業の再定義」については、まずICTの位置づけの再定義が必要であると言います。下の図はいわゆる技術のSカーブと言われるもので、時間の経過やリソースの投入度合いをX軸に取り、それに対する技術の発展度合いをY軸に表したものです。一つの技術が発展していく様を表すのに適しているわけですが、ここに様々な技術をプロットしています(森川氏の講演を元に再現)。

技術のSカーブ

右上のエリアが成熟してきた技術。そして左下が発展途上や新しい技術です。土木や建築の技術は相当な成熟度である一方で、脳科学であるとか宇宙の研究というのは、まだまだ発展の余地が大きいということを示しています。その中でICTは成熟段階に差し掛かっていると森川氏は述べます。

技術が成熟するにつれて、ビジネスのやり方を変える必要があります。つまりSカーブの右上に来れば来るほど、イノベーションが必要なのです。すなわちこれが、事業の再定義です。今日、多くの成熟企業において、事業の再定義が必要になってきています。

例えばタイヤ。1888年に空気入りタイヤが実用化されて以来長きにわたって、タイヤ事業者の事業の立ち位置はタイヤの製造販売でした。しかしこれをミシュランは「Pay Per Mile(走った分だけ課金)」という形のサービスに仕立てあげ、モノの提供からサービスの提供にシフトしました。あるいは空調。空調機器を販売するのではなく、空調機器によって得られる「快適さ」を売るモデルに転換しました。またアマゾンや楽天といった大手ネット販売は、小売という事業から、顧客の嗜好、行動様式、購買履歴、決済、そして物流まで商取引の全てを把握し、そこから多面的に事業を広げています。

これに対して、成熟企業の代表選手とも言える金融業界は激動の時代を迎えつつあるといいます。銀行はお金が集まる場ではありますが、先の例のアマゾンや楽天、またはアリババといったようなeコマース大手が商取引のプロセスの全てを把握しているのに対し、銀行は決済というほんの一部しか把握できません。デジタル化が進むということはすなわちデータ化が進むということですから、このデータ量の差では銀行に到底勝ち目はなさそうです。こういった部分でも今「FINTECH (Finance + Technology)」といった形で、イノベーションが必要になってきている分野と言えます。

同様に成熟段階に差し掛かっているICT(Information & Communication Technology)においても、イノベーションが求められています。ポイントは汎用的(オープン)な技術、そして「集まる場」だと言います。過去に蒸気機関から様々なものが生まれたのと同じように今、ICTからも様々なものが生まれています。蒸気機関からは思いもよらかなかったものも生まれたと森川氏は述べます。例えばウォール街。例えばMBA。蒸気機関によって生産性が上がり経済が大きく発展し大企業が生まれました。するとこれまでの金融技術では対応できない事案が増え、それについて研究され、結果として金融事業が大いに発展し、ウォール街ができたといいます。風が吹いて桶屋が儲かった感じですね。MBAも同様に、中間管理職というホワイトカラーが増加したために、彼ら向けの効率的なビジネススクールが求められたことによって生まれたといいます。

ICTからも多くのものが生まれつつある現代ですが、日本と米国のIT技術者を比較すると面白い対比ができます。
日本において、IT企業に勤めるIT技術者は全体の4分の3。残り4分の1はユーザー企業にいます。米国ではそれが真逆で、IT企業に勤めるIT技術者は全体の4分の1、ユーザー企業には4分の3。この差は直接「生産性」に繋がっていると森川氏は言います。GDPの残り9割をデジタル化することが重要であると最初に述べましたが、これはまさにユーザー企業をどうスマート化するか?という命題とイコールなわけです。つまりユーザー企業により多くのIT技術者のいる米国においては、残りの9割をスマート化し易いということが言えそうです。日本の場合は人材の流動性が米国ほど高くないため、これまで通りいわゆるシステムインテグレーターなどが、ユーザー企業をサポートするという構図が続くだろうと見られています。

「集まる場」としてのICTの重要性にも触れています。例えばGoogleが買収したNestという会社。サーモスタットを中心にスマートホームの実現に始まり、さらには自動車との連携なども実現されつつあります。しかしこういったコンセプトは日本においても随分前から提唱されていました。例えばパナソニックのECHONET。しかし全くといっていいほど世間に受け入れられていませんね。なぜか?これと同じようなことをシリコンバレーで始めると、何故かキャッチーになる。

これに対する明確な答えは今のところ見つかっていませんが、一つには、集め方、見せ方のうまさがあります。別の言い方をすると、Nestは「APIエコノミー」と言えます。そこに人が集まりやすく、繋がりやすい場を提供しているのがNestと言えるかもしれません。ここは日本企業が弱いところですよね。

ECHONET的な概念として、GE主導のインダストリアル・インターネットというものがあります。これは基本的にはGEのタービンやエンジンなどを監視するPredixを売るためのものと言っても過言ではないのですが、何かオープンなイメージありませんか?GEという一企業が推進しているIoTということで、言ってみればパナのECHONETと同じなんですが、そんな印象薄いですよね。これもやはり集め方、見せ方(魅せ方)がうまく、サードパーティーも繋がるというAPIのエコノミーを提供しているからと言えそうです。

最後に、お金の集め方として秀逸な例を紹介して締めたいと思います。
LifeStrawという浄水器があります。清潔で安全な水が入手できないときでもこれを使えば、例えば沼地の水でもそのへんに溜まっている泥水でも飲むことができるようになるというフィルターです。アフリカなどで大きな需要があるんですが、1本5千円くらいするのでなかなか十分に行き渡りません。そのアフリカでは、清潔な水を得るために、森を燃やしそれで水をろ過していたそうです(詳細は不明ですが、とにかく森を燃やしていたそうです)。そこに目をつけたのが二酸化炭素の排出権を扱う団体。このLifeStrawを現地に配ることができれば森を燃やさずに済みます。つまり二酸化炭素の排出権として取引可能になるので、そこから資金を捻出して現地にこのフィルターを配布したということです。

IoTで事業立地の再定義が加速するのは間違いないことですが、やはりお金の調達は重要です。この点を様々な知恵やテクノロジーを駆使してクリアしていけば、残りの9割のデジタル化、スマート化も加速するのではないでしょうか。

稚拙なまとめで恐縮ですが、非常に参考になった講演でした。
ではまた。

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