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M2M講座 第16回 – IoTのトレンドを解説する (1)

みなさん、こんにちは。M2M Masterです。
今回から新シリーズとなりまして、最近の流行語となっているIoTやIndustrie 4.0、Industrial Internetなどの擁護に象徴される新しい動きについて、既存のM2M的なビジネスにどのような影響を与えるかという視点から解説していきたいと考えます。

前回の講座はこちらになります。
また、M2M講座の目次はこちらになります。

今回から数回は、まずIndustrie 4.0について解説していきたいと考えています。私は2015年10月15日に開催された日経ビジネス主催の「インダストリー4.0 Summit」を聴講して、多くの知見を得ることができました。今回は、この知見などに基づいて解説を行いたいと思っています。

4.1 Industrie 4.0とはなにか

Industrie 4.0とは、ドイツ政府が提唱するコンセプトであり、IoTに代表される情報通信系のテクノロジーを用いて、多品種少量の生産をより高効率低コストで実現する方策を提唱しているというものである。

この実現手段として、以下のような技術の利用を提唱している
●工場にある製造装置のネットワーク化
●瞬時に製造するものを切り替える製造ライン
●サプライヤとのネットワークによる連携
●製造装置の予兆診断・予防保全
●さまざまな個性を持った作業員にそれぞれ適切な方法で指示を出して快適に作業をしてもらう環境

ひとつ注意すべきことは、Industrie 4.0とは、コンセプト的なものもしくはスローガン的なものであって、実際の技術仕様ではないということである。この点においてIndustrie 4.0とは世間から誤解を受けていると指摘されていた。
技術仕様ではないということは、すなわち工場のネットワーク化やサプライヤとのネットワークによる連携について、それを実現するための通信の方式や実際に送られるデータの形式などを規定していないということである。したがって、通信機器やサーバ上のアプリケーションなどの個別個別の構成要素を提供しようとしている企業から見ると、どのようなものを作ってよいのか現状ではわからないという状態になっているのである。

4.1.2 Industrie 4.0の特徴を掘り下げる

Industrie 4.0の性格を決定づけているものは、それがドイツで提唱されているということである。すなわち、多くの内容がドイツ国内の産業界の在り方の影響を受けており、ドイツ産業界の課題を解決するということを目的に構想されているのである。

ドイツの製造業の特徴としては以下のようなものが挙げられている。
●中小企業が多い
●多くの都市に分散している
●同一品種大量生産の製品の製造は既にドイツ国内からは居なくなっており、多品種少量生産が主流
●国民全体が高齢化しており労働者も高齢者の考慮が必要
●しかし東欧や中東からの移民の労働者も多く、労働者の言語能力や教育レベルの差が広がっている
●労働政策としては労働者の権利を強く認める法制度となっていて、労働単価は高くまた解雇をしにくい
●なんといっても最も盛んな分野は自動車や自動車に関連する製品である

このようなドイツの状況が、Industrie 4.0の性格に非常に大きな影響を与えていることは言うまでもない。たとえば安川電機の講演者は、Industrie 4.0がモデルとしている製品は自動車であり、たとえばスマートフォンのように1千万というオーダのまったく同じ仕様の製品をひたすら作り続けるようなものには適していないと言い切っていた。つまり、1日の生産個数やそれぞれに色やオプション品のバリエーションがどのくらいあるか、という点でそれが「自動車くらい」の生産量とバリエーションである場合にしっくりくるような内容になっているということである。
また同講演者によれば、ドイツでは地域ごとに大学を中心とした産学のコミュニティが存在しており、そのコミュニティの中では企業間の情報の共有や技術の共通化が盛んにおこなわれているようである。この状況もIndustrie 4.0の後押しとなっているのであろう。

また労働政策の影響も大きいと思われる。Industrie 4.0は工場のネットワーク化を標榜しながらも、工場の完全自動化という目標は掲げていないのである。これも労働者に多大な配慮が必要なドイツの事情を反映していると思われる。
Industrie 4.0の個々の内容には自動化を実現するようなものが非常に多いにもかかわらず、「あくまでも工場は人と機械とが共存する場所である」と言わなければならないところにドイツの政治的な事情が透けて見えるのである。
4.1.3 Industrie 4.0は日本の製造業にどのような影響を与えるか
日本ではIndustrie 4.0への注目度は非常に高いと言ってよいだろう。しかしそれを実際に導入する際においては、Industrie 4.0の本質を間違わないでほしいという思いがある。Industrie 4.0はドイツの、特に自動車業界の状況を反映したものなので全てが日本の各種の製造業でも有効なものとは限らない。また技術仕様ではなくてスローガン的なものであるわけだから、日本の企業として自社に有効と思われるものだけを先行して導入するという姿勢でよいのである。
Industrie 4.0をパッケージとしてとらえて、そのすべてを実現しなければならないと考えることは間違いである。その意味で「日本版Industrie 4.0を作ろう」という動きもナンセンスである。日本は政府にそのようなことを期待していないし、製造業全般に適用な可能なパッケージなどというものができるわけもない。官僚の自己満足以上の意味を見いだせないので、企業はそのような動きには惑わされないでほしいものである。

そのなかでオムロン社の講演はかなりインパクトの強い内容であった。オムロン社は、工場のラインに関して、製造物がライン上の個々の装置を通過した時刻をプロットし、グラフ化して表示するという単純なシステムを用いて、ラインの動きを「見える化」する手法を紹介していたのだが、これによりオムロン社自身の工場のラインにて試験的に実施した結果では生産効率を30%も上げることに成功したというのである。実験に参加した別の企業からの情報によれば30%というのはまだ少ないほうで、もっと効率が上がった例もあったようである。これは驚異的な数字であり、もしこれだけの生産効率の向上が望めるのであれば、得られたデータをほかの目的でも使用するなんてことは考えずに、この目的のためだけにラインのネットワーク化を進めてもよいレベルであろう。

Industrie 4.0をパッケージとしてとらえて、あれもこれもと検討するよりも、上記のような確実に効果が上がることを速やかに実施するのが正しい対応である。その意味では日本の企業その辺はわかっているようであり、今後工場のネットワーク化や予防保全などは急速に広まっていくものと思われる。

最後に日本においてIndustrie 4.0とは違う方向性に動いてほしいことが一つある。それは「工場の完全自動化」への態度である。日本はすでに人口減少社会になっているし、移民を多く導入するということもなさそうである。そうであれば、一般人の抵抗感も少ないと思われるので、「工場の完全自動化」を目指す動きをより明確に打ち出すべきであろう。もし「日本版Industrie 4.0」がここまで踏み込むのであれば、官僚の自己満足なんてことは言わずに、高く評価したいものである。

以上で今回の抗議は終了とします。次回の講座では、Industrie 4.0が既存のM2Mマーケットにどのような影響を与えるかについて考察してみたいと思います。次回をお楽しみに。

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