m2m box

M2M/IoTの情報プラットフォーム

By

書評:IoTとは何か 技術革新から社会革新へ

言わずと知れたTRONの生みの親で、世界で最初に「IoT」のコンセプトを提唱したと言われている坂村健氏による新書。その名も「IoTとは何か」。

オススメ度:★★★★☆

新書形式で読みやすいし、IoTって何だっけ?って人にも読んで欲しいし、それなりにIoTに携わっている人が読んでもいいと思いますよ。IoTへの携わり方次第ですが、僕には新鮮な内容でした。

坂村氏は、TRONという組み込み用リアルタイムOSを開発し、ユビキタスコンピューティングというコンセプトで、あらゆるものを相互に繋げてインテリジェントな世の中にするという活動を、もう30年ほど続けています。30年!

我こそがIoTのコンセプトを世界で初めて提唱したという自負をお持ちだろうし、それについては大変尊敬もし同じ日本人として誇りにも思います。しかし若干、我こそが感が全面に出すぎているというか、TRONはこんなに前からこんな取り組みをやっていたんだぜといったような記述が目についたのは、ご愛嬌です。

昨今、盛んにIoTだIoTだとあちこちで声高に言われています。それって大体のケースにおいて、ビッグデータとか機械学習とか、人工知能だとかクラウドだとか、言わば「IT」側からのアプローチが中心になっていると思うんですね。坂村氏も当然クラウドにインテリジェンスを実装して、「アグリゲート・コンピューティング」というコンセプトでもって、様々なデバイス(家電、自動車、家、家具、衣類、などなど)が自律的にデータを集約して、何らかのプロセスを施して結果を必要に応じて返すといったモデルを提唱しておりますが、軸足はやはり組み込み側にあります。いかに組み込みサイドで効率的にデータを取得して転送し、ネットワーク化を実現するのかといったところを専門に研究されています。

組み込み側、つまり現場サイドからのIoTへのアプローチですので、誤解を恐れずに言えば、非常に地に足の着いた実践的なIoTであるという印象です。ガチのIoTというか。長年こういった研究をされているので、具体的に社会にIoTを出すことの難しさも十分説明されています。

中でも印象に残ったのは、IoT実現のハードルは技術よりもガバナンスであるという点です。文化的心理的な障壁と法的な障壁が、日本の場合特に強いと。日本の場合「クローズドでギャランティ型」のサービスが主流です。つまり一社が独自にかつ、完全に品質や納期などを保証するというモデルです。対してIoTでは「オープンでベストエフォート型」であることが重要です。インターネットと同じく、責任の境界が明確ではなく、あらゆるシステムがAPIを通して相互に接続できる必要があります。

さらに法制度的にも、日本の場合「ポジティブリスト型」であり、想定されていないことは基本的にやってはいけないことになっています。つまり新しいことに対応するのが難しいわけです。一方で英米方では「ネガティブリスト型」なので、基本的にはやってはいけないことだけがリストされ、それ以外はOK。何か問題が生じれば、個別具体的に議論して以降は判例として横展開できる。何か新しくイノベーティブなことを始めるのに適した環境がどちらかは明白ですよね。

これまでに読んだIoT関連の本とは異なるレイヤーからのアプローチといった内容ですが、そういう意味でも面白いし読むべき本かなと思います。

ではまた。

このエントリーをはてなブックマークに追加
はてなブックマーク - 書評:IoTとは何か 技術革新から社会革新へ
Share on Facebook
Post to Google Buzz
Bookmark this on Yahoo Bookmark
Share on LinkedIn

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です